寒中お見舞いと申し上げたいところなれど

 本日1月20日は二十四節気によれば「大寒」とある。わが幼少の頃、

これをなんと「おおさむ」と読んでいたのである。小寒は、当然こさむ

である。「おおさむこさむ」と歌にもあるから何の不思議もなかった。

恥ずかしい。無知の知を知るとは衝撃と赤面を伴うのである。

 

 大寒となれば立春も近い。あと2週間で巡ってくるというのが約束。

この冬はさほどの雪も降らず、昨日オトトイと実施されたセンター試験

も天候が特段の影響を与えるようなことなく済んだ。当家にも関わりの

あることなのでホッとしたのであります。こりゃもう春じゃわいなあと

いきたいところなれど、きっとそうもいかないだろうというのがこれも

天と人との約束ごと。この先幾つかの寒波は覚悟しなければなるまいと

空を仰ぎ見たりするのである。それにしても空の青と言うのは美しい。

 

 まあそんなこんなで春が待ち遠しいのだがこれは一種普遍の感情とも

言えるようで、人は日脚の伸びと共に胸にさざ波が生じるように春への

思いを募らせるようだ。早い話が万国共通というやつ。そして、かなり

それは切ないものでもあるようだ。特になにかしらの屈託やナヤミの種、

ままならない事情があったりすればなおのこと。人みなそんなものを抱

えて生きてますからそういう意味でも春を待つ心の模様が深い色合いを

もつのも万国万人共通と言えよう。大人ならね。

 

 さて、春が来るのを信じよう、やがてやってくる春を信じよう・・と

いう歌があるのですね。「You must believe in spring」と直球の題です。

映画「ロシュフォールの恋人たち」、音楽はミシェル・ルグラン作曲と

いう名作ミュージカルの中のナンバーなのですが、原題はデルフィーヌ

の歌というのだからこの英語のタイトルはまるで関係ないようなもの。

そちらの方はストーリー展開に伴う歌詞なので至って能天気なものに思

えるのだが、英語の方はもう歴としたスタンダードナンバーとして切々

たる思いを歌い上げる逸品となっている。

 

 男女どちらの声が聞き手の気持ちに適うかは誰が歌うかやその時々で

当然違ってくるが、これは間違いなかろうというのがトニー・ベネット

ビル・エヴァンスのもの。


You Must Believe In Spring - Tony Bennett and Bill Evans

歌詞は次のとおり。各位におかれましては気ままに解釈を。

When lonely feelings chill

The meadows of your mind,

Just think if winter comes,

Can spring be far behind?

 

Beneath the deepest snows,

The secret of a rose

Is merely that it knows

You must believe in spring.

 

Just as a tree is sure

Its leaves will reappear;

It knows its emptiness

Is just the time of year.

 

The frozen mountain dreams

Of April's melting streams,

How crystal clear it seems,

You must believe in spring.

 

You must believe in love

And trust it's on its way,

Just as the sleeping rose

Awaits the kiss of May.

 

So in a world of snow,

Of things that come and go,

Where what you think you know,

You can't be certain of,

You must believe in spring and love.

 

 この曲は歌としては勿論のこと、メロディがプレイヤーの心をがっちり

と掴まえたと見え、選ぶのに困るほどの演奏がある。ここでは、アート・

ファーマーのフリューゲルホーンでいきましょう。トランペットとも違う

サックスとも違う不思議なタッチと温かみが言葉なくして思いを語る。


Art Farmer with The Great Jazz Trio - You Must Believe In Spring

 ピアノはハンク・ジョーンズ、ベースはエディ・ゴメス、ドラムスが

ジミー・コブのザ・グレート・ジャズ・トリオ。日本制作のアルバムで、

アレンジが佐藤允彦さん。いいですねぇ。

 

 実は今日の夕方、友よりメッセージ来信あり、アート・ファーマー

聴きながらこれより晩酌す、と。あらまウラヤマシと思ったのでお返し

にかくかくしかじか綴った次第であります。どちら様もごきげんよう