鳥海山を見るとき

かつて、長野県のある高校の校長で「常念校長」とあだ名された

人物がいたという。全校集会の度に生徒の前で発するのはただ

一言「常念を見よ」。そして講堂から望む常念岳をぴたりと指差し

降壇する。しかし、それだけで生徒たちは何事かを感じた。

秋田県沿岸南部で生まれ育った私にとって、間近に仰ぎ見てい

鳥海山の姿はそうした格別の意味を持っている。

 

先日この写真を部屋に掛けた。2001年夏のものなのでいささか

古いのだが、暮れてゆく空にかかる半月と静かな鳥海山のたた

ずまいに何か心打たれるものがあり写したのだった。病からの

帰還を果たし養生していた頃であった。手前の水面は、子吉川

画面右手が日本海に注ぐ河口付近である。