車といえば

 車と言えば、でもうひとつ。1960年の前後にヨーロッパを中心にPeel P50のような冗談みたいなちっちゃな車がいろいろと作られたらしい。大戦で疲弊したヨーロッパの資材不足やスエズ動乱前後の中東情勢によるガソリン価格の高騰などがあって必要に迫られてのことだったようだ。一人かせいぜい二人が乗れて荷物を運べればオーケー、今はとにかく燃費だぞ、とこの頃よく聞くようなことが巷のニーズだった。

 ということでのミニマムからの発想なのだけれども、それが機械を愛すること尋常ならざる連中がやることだから面白い。マイスターの誇りがかかっている。大方はスクーターに屋根を付けたようなものが原型となったがカーブでこけたりしないように3輪にしたりの工夫がある。代表的なのがイタリアのイソ社が作った「イセッタ」。小さなイソだからイセッタなのだそうだ。こうした車は丸っこくてシャボン玉の泡のようだからバブル・カーと呼ばれるカテゴリーになったという。

 イソ社は元々は冷蔵庫やスクーターを作っていた会社。製造品目の取り合わせも不思議だが、そんなイソさんが、「ワシらのノウハウを生かして一丁自動車製造に打って出るべし」と考えた。そのひらめきがすごい。単純にして斬新、あるものを100%活用である。245ccのスクーター2台を並べ、間に冷蔵庫を挟んではしらせようという企み。冷蔵庫がキャビンとなる。当然ドアは前に開く。当たり前じゃん、と澄ましたものである。はあ?ハンドルは?あれはどうするの?これは?と疑問山積であるが涼しい顔で解決し、なんとも魅力的な車が出来上がった。人気沸騰である。イタリア発のデザインですっとぼけた愛らしさで大流行。他のメーカーによるライセンス生産も盛んに行われた。その成功例がBMWイセッタで今も健やかに走っている。

 見れば誰でもニッコニコとなる、今でも十分通用するよくできた車だ。特にデザインが秀逸ではないか。どことなくファニーではあるが風格もそなわる。大人のデザインである。これからすると我が日本の軽自動車のデザインはちと芸が無さ過ぎるのではあるまいかと思ってしまう。まずは一見にしかず。元祖コンパクトカーのイセッタとはこんな感じ。3輪と4輪が並んでいるが1955年もののオールドイセッタ。やっぱり右の3輪の方が「らしい」感じがする。

イセッタ1955

 さて、どうやって乗るのかというと。あらま、なんてお洒落なんでしょワタクシ。

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 で、これが本当に今でも走ってるところを見てみようではありませんか。なんてったってBMWである。4輪で600ccになっている。エンジンのサウンドもよし。

 そしてこれが当時のBMW発コマーシャルフィルム。短いのと長いのと2本立てでどうぞ。学校に子供を送っていったりあれやこれやと便利です。乗り降りがなんて楽そうな。すっと降りてるもの。これいいなあ、ほしいなあとおもいませんか?