英国の音楽

 小さな島ながら英国イングランドスコットランドウェールズ北アイルランドからなる連合王国であり、かつ英連邦王国の一国であるというまことにややこしい国。実のところ、アイルランドもひっくるめて一つのイギリスだと思っている場合が多いだろうし、ましてオーストラリアニュージーランド、カナダほか全部で16カ国からなる連邦だなんてどうもピンとこないのではないだろうか。更に以前の18の連邦王国を加えるとその規模はあきれるほど大きい。まったく確かに大英帝国であったのだ。

 

 それで話は英国音楽だが、日本では「歌」や「メロディ」の面から一方ならぬ親しみがある。ドイツ音楽への教養的アプローチに対して、日常的な、様々な心の風向きに沿った好み方なのではないかと思う。近いところでは、ホルストの「ジュピター」やエルガーの「威風堂々」など、若い人たちも当たり前のように自分たちの音楽に取りこんでいる。

 スコットランド民謡の「の光」なんかはほとんど日本の歌と思われていて、卒業式や船出、そしてデパートの閉店の音楽で客の送り出しに使われている。よく「夕焼け小焼け」や「赤とんぼ」と同じヨナ抜き音階だからなのですよ、と解説されるが、それだけではないもっと深い何かがあるような気もする。

 アイルランド民謡では「ダニー・ボーイ」が切ないことこの上ないし、イングランド民謡「埴生の宿」は、映画『ビルマの竪琴』で日本人を大いに泣かせた。それに比較的近くでは「スカボロー・フェア」のヒットがあった。そうしたなじみの深いイングランド民謡の中でも、16世紀後半ごろから歌われたと言う「グリーンスリーブス」は格別の美しさを持つ。これが最も古い部類だというから敬服するほかない。

 

 イギリスの島の住人というのは昔から歌心にあふれていたようだ。後の人々もそれを大いに誇りにしてきた。ヴォーン・ウイリアムズもそうした作曲家の一人。吹奏楽のために書いた「イギリス民謡組曲」というそのものずばりの曲もある。でも、もっと名高いのが「グリーンスリーブスによる幻想曲」。これはオーケストラのための小曲だがひたひたと心に迫る。なお、グリーンスリーブ(緑の袖)の意味合いはちょっと「訳あり」なので割愛。

 

 

  もうひとつ、これはルネサンス・スタイルでの「グリーンスリーブス」演奏。草原のそよ風のようですごくいい感じだ。