「言い出しかねて」

 ジャズのスタンダード・ナンバーのタイトルである。原題は「I Can't Get Started」で1935年の曲。それを「言い出しかねて」と訳し、以後定着している。いかにも日本人好みの切なさを身にまとった題ではあるが、意訳というより誤訳だとの指摘もある。もとは歌詞の中にある I Can't Get Started With You. が題だったのが、尻尾を切って短くされてこうなった。でもこの方が却って日本語訳に似合う感じもする。

 作詞はジョージ・ガーシュインの兄アイラロシアユダヤ人の移民の子である。そして作曲はヴァ―ノン・デューク、革命後にニューヨークに定住したロシア人である。それでもこれはロシアのというよりアメリカの歌。うーむ、と分からなくなる。

 考えてみるとアメリカの音楽とは言っても実はイギリス経由、東西南北のヨーロッパ経由、ロシア経由、中南米経由、アフリカ経由などのミックスなのだった。それぞれの音楽性が独自の要素を織り込んでできあがった複合体。人種のメルティング・ポットと呼ばれるアメリカは音楽のメルテイング・ポットでもあった。当たり前のようだがこれは意外に難しい問題。アメリカ音楽ってなんなのだ?である。

 

 後でゆっくり考えよう。まず聴くのが一番だな。ジョー・パスのギターで。

 

 

 もうひとつ、ソニー・ロリンズで。これはこの間亡くなった中学校の同期生を偲んでです。吹奏楽部でテナーサックスを吹いていてロリンズという仇名だった。