Claire Martin を聴きながら

クレア・マーティン、イギリス人。ロンドンはウインブルドンの出身である。UKにおける The First Lady of British Jazz と呼ばれる大物シンガーなのだそうだ。1967年9月6日の生まれとくれば、まあなんという偶然、つい先週が48歳の誕生日であった。お・め・で・と・う!だぞ。

実はこの人の歌も Linn Jazz のおかげで耳にすることができた。ありがたくも自社レーベルの所属アーティストのアルバムを一生懸命高音質で流してくれている。宣伝を兼ねてとはいえ、無料で聴いて感心するばかりでまことにすまぬ。

ピアノだけをバックに歌う声が聴こえてきた。ハッとする声である。ハスキーというよりももっとなにかふくらみとキックのある声、そしてピアノが「あれま」と思うくらいの絶妙の味わい。即座にネット調査開始である。ほうほう、クレア・マーティンの声は「smoky voice」と呼ばれていると。なるほどたしかに。スモーキーと言えばウイスキーの味わいの形容、まさにそんな感じなのだろう。そしてピアノは、ああまたしてもケニー・バロン。ドラムもベースもなしの、歌を介したコラボレーションである。本当にこれだけの音があればよいと思わせる密度の濃さが惹きつけてやまない。この、聞き流すことのできない強い磁力をもって一貫したプレイは、これが何のジャンルであるかということを超えて、音楽を聴いている嬉しさそのものを感じさせてくれる。ピアノだけで聴き手のなかにあるリズムを作動させ波に乗せてくれるのだ。人それぞれの内なる音楽、これが私たちにそれぞれの波長で音楽を選ばせ向かわせる。

なにげなく聴いていて「お、このピアノは・・・」と気になって目が覚める思いをすると、それがたいがいケニー・バロンだったりする。どうしてなのかは不思議だが、これが波長のマッチングというのか、要するに好きだなあということなのだろう。「・・・・だから好きだ」とか「・・・・がいいから」とか分析的に説明するのは難しい。子供みたいだが「ぜんぶ」というしかない。敢えて言うならば、ピアノと弾き手の、いわば人馬一体の境地が産み出す「ほかにはない調和」が実感できるのだとしておこう。

2012年のアルバム「Too Much in Love to Care」からの一曲、「Time after Time」をまず。

歌詞を次に載せてみる。タイトルどおり「何度も何度も」胸の内を訴えていじらしい歌でありますね。

[Verse]

What good are words I say to you?

They can't convey to you whats in my heart

If you could hear instead

The things I've left unsaid

[Chorus]

Time after time

I tell myself that I'm

So lucky to be loving you

So lucky to be

The one you run to see

In the evening, when the day is through

I only know what I know

The passing years will show

You've kept my love so young, so new

And time after time

You'll hear me say that I'm

So lucky to be loving you

もう一つ、同じアルバムから。この「Embraceable You」じつに最高。エラ・フイッツジェラルドもいいがこうしてクレアの歌を聴くと、スタンダードナンバーというのはいつも新しいのだと思う。まさにエヴァーグリーン。

歌詞は以前のエントリー2013/07/06で載せたのでよろしければそちらを。自分でもほとんど忘れていたがもしやと思ってブログ内検索で Embraceable You と入れたらやっぱり書いていた。