8月15日に

 毎年のことながら、相変わらずTVも新聞も今日8月15日を騒がしく扱っている。登場する名のある人々の多くが「立場」でものを言う。賢しげである。己の信奉する思想に拠って、それのみが正しいと声高らかである。見苦しい。戦死者を貶める者もいる。守られた者が守った者を鞭打つのである。これは卑怯と言わねばならない。私が言いたいのはただ一言「静かにしろ!」である。年老いて様々な思いをじっと胸に秘めて静かに祈る人々の姿があるのだ。私の母方の伯父もレイテ島で戦死している。

 

 人が祈ること、そこに国や宗教の違いというものがあるとは思われない。人の最も根源的な、奥深くに持っているものがさせるのだと思う。そう確信させる音楽がある。1791年、モーツアルトが世を去る半年前に作曲した「Ave verum corpus」である。3分をわずかに超えるくらいの短い曲。この、人が祈ることの純粋さそのものと思わせる澄みきった音楽の前では、ただ沈黙し自分もまた祈るしかない。失われていった命と今生きている自分もまたつながっているのだから。