枯葉

同じ言葉でも人によって思うことは違う。「枯葉」と聞いて思い浮かべるのが

落ち葉焚きの焼き芋の人もいるだろうし、すっかり葉の落ちた街路樹の下を歩く

時のカサコソという音を思いだす人もいるだろう。ワタシなんぞは広場で落ち葉

を集めてこんもりと山にし、その中に潜り込んで遊んでいた子供の時分を思い出

したりもする。忍法木の葉がくれー、のつもりだったのだろう。あったかいもの

でしたよ。子供だからできたことだなあ。七十にもなった今やったらそれは相当

に問題行動だ。

 

まあそれはともかくとして、「枯葉」のタイトルはスッと音楽に結び付く人も

多いだろう。それがシャンソンであったりジャズであったりはするだろうけど

スタンダードの名曲として代表のようになっていることは確かだ。そして更に

その中でお好みというか「これでなくては」と、自分の中で決めている演奏が

いつとはなしに定着しているのだろうなと思う。それが例えばジャズだったら

ビル・エヴァンス、ウイントン・ケリー、マイルス・デイヴィスジム・ホール

などなど定番とも言うべきアルバムがあり何十年と経過しても聴かれている。

ある本によれば大物ジャズピアニスト二十人で調べたら最も多く演奏されていた

のが「枯葉」だったという。

 

とはいえあまりにも定番で「ああ、枯葉ね、はいはい」という退屈と紙一重

ところもある。実のところこの曲を新鮮な味わいをもって演奏するというのは

かなり力を試されるのではないか。テーマをちゃっちゃと済ませて、アドリブ

に入ればこっちのものだとばかりに身勝手に扱われては白ける。名曲中の名曲

だからこそ、陳腐平凡に陥らず、この曲そのものの良さを緩みなくしっかりと

聴かせてくれる演奏がよい。

 

と思うこの頃にひょいと出会ったのがこの演奏。Beegie Adairというピアニストで

ございます。ビージー・アデールと読むのでしょうか。1937年生まれ。今月11日

に83歳の誕生日ですよ。素晴らしい。音楽が人を成熟させる力というのは大した

ものではないかとも感じます。それを受け取る側の問題であることは言うまでも

ないことですが。曲に誠実に向かうってこういうことかなと感服したのでした。

  


Beegie Adair Trio - Autumn Leaves